自由を求めて

セミリタイアを目指す40代会社員の日々感じたことの記録をしていこうと思います。連絡先はkenkou146@gmail.comです。

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深水 黎一郎の美人薄命を読んだ

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[ミステリーというより心温まる話だった]

このミステリーがすごいのランキングに載っていたので読んでみました。ミステリーと言えばミステリーなのですが、ミステリーというよりは心温まる話でした。読後感もさわやかで読んでいる間も楽しかったです。ただものすごい謎とかがあるわけではないのでミステリーの部分に期待しすぎるとやや肩透かしを食らうかもしれません。

 

あらすじは一人の大学生がボランティアで一人暮らしの老人に弁当配りを始めてある老人と交流するというものです。主人公は月に2回無償でバイクに乗って弁当配りをします。大学の単位のためにやむなく始めるバイトであまりやる気もないまま一人の老人と出会い交流が始まります。

 

[主人公がものすごくいい奴だった]

主人公は大学の単位がもらえないのでしかたなくフィールドワークということでボランティアを始めます。主人公の印象は一言で言えばチャラいという印象です。バイクに乗ってボランティアも適当にやってすぐやめるつもりだったのです。

 

そして一人の老人と出会って交流が始まるわけですが交流自体は短いものでした。様々な偶然も重なったわけですが普通の若者ではできないような優しさを自然に老人に伝えます。チャラいどころかその対極にいるような人間でした。ただあまりにも素晴らしい人間だったために共感しきれない部分があったのも事実です。もう少し欲望との葛藤みたいなものがあってもいいのではないかと感じました。

 

[伏線っぽい話が結局なんでもなかった]

思わせぶりなセリフや登場人物がでてきますが結局なんでもなかったです。読み終わってみるとあれは何だったんだという気がしてしまいます。ミスリードというわけでもないので、あえて言えば主人公の性格をより表現するためのものだったのでしょうか。

 

個人的な好みでは物語に出てきた様々なエピソードや何気ない一言が最後一本の糸でつながるようなミステリーが読みたいです。伏線を放っておいたり最後まで読んであのシーンは何だったんだというのがあるのはやや不満でした。

 

[戦争の話が胸を打った]

この小説の重要な部分を占める話に戦争の話があります。戦争の話がミステリーとは別に胸を打ちました。純粋な若者たちが自分の家族や国を守るためと言われて出征していく姿は胸が痛くなります。許せないのは当時の軍の上層部です。何万という若者の命を捨て駒にして戦争をしているのです。

 

現在の政治家も色々批判されていますが当時の権力者よりは百万倍ましでしょう。時代というものがあったでしょうし強力な権力があると人間は誰でも暴走するのかもしれません。ミステリーという本筋を離れて戦争というものを考えてしまいました。

 

[謎を解く人がもっと登場してもよかったかも]

ミステリーの謎解きをする人が最後の最後に登場します。この人がスラスラと全て解き明かしていって爽快感を感じます。ただこの人が本当に最後の最後に登場するので当然あまり感情移入はできないキャラクターとなっています。

 

できることなら主人公が自分で謎解きするか物語の中盤くらいから出てきたキャラクターが謎解きするほうが良かったような気もしました。よく知らないキャラクターが突然出てきて全部説明すると著者が最後に全部解説みたいな印象もあります。謎をちょっとずつ解いたり苦労して解いたりする部分があってもよかったかもしれません。

 

[まとめ]

なんだかんだと言いましたが楽しめましたし読んで良かったです。戦争というものについて考えることができたのも良かったと思っています。よく聞く言葉ですが普通に生活できるだけでありがたいことです。ミステリーと戦前の時代の物語の融合が見事でした。

 

美人薄命 (双葉文庫)

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