[数時間で記憶がなくなるのも悪くない]
この小説は数時間で記憶がなくなってしまう男が殺人鬼と戦う話です。なにしろ数時間で記憶がなくなってしまうため、すぐに殺人鬼と戦っていることさえ忘れてしまいます。そのため重要なことはノートに書いて記憶がなくなるたびに読む必要があります。殺人鬼に襲われている時などノートをのんびり読んでいる暇もないため読者はハラハラすることになります。
殺人鬼に関する注意事項や論理的推察なども記憶がなくなるたびにもう一回初めからすることになります。そこがもどかしくも面白い部分でもあります。ミステリー小説というよりはサスペンス小説として楽しめました。この小説を読み終わって一番思ったことは数時間で記憶がなくなるのも悪くないような気がするということでした。
実際自分がそうなっていないから言えることかもしれませんが嫌な記憶も数時間でなくなってしまうのはありがたいことです。僕自身が過去の記憶に苦しめられることが多いからそう思ってしまいます。10年以上前の出来事でも急に頭の中に浮かんできて辛い気持ちになったりします。
覚えておかなければならないことはノートに書いておけばいいわけです。もっとも実際記憶がなくなったら不便で仕方ないとは思います。記憶があるうちに必要なことをすべて後から読んでもわかるようにノートにまとめるのは至難の業です。人間関係もすべて忘れるため他人と関係を進展させることができません。
それでもうらやましいと思ってしまうほど僕はよく過去の記憶に苦しめられます。覚えていなければならないことはすぐに忘れるのに忘れたいことは10年でも20年でも覚えています。記憶喪失の人がうらやましくもなります。
[自分も記憶障害のようなものかもと思った]
それにしても僕も重要なことをよく忘れてしまうのですがそれも一種の記憶障害のようなものかもしれないと思わされました。自分の手帳に書いておかないとみんな忘れていきます。絶対忘れないだろうというインパクトのあることでもすぐに忘れていきます。手帳を見直すと驚くことがよくあります。
この手帳を見て驚く心理がこの小説の主人公と同じように感じて主人公に共感しました。どうでもいいことはや忘れてしまいたいことはいつまでも覚えているのに重要なことはスコーンと忘れてしまいます。単に物忘れがひどいのかと思っていましたが脳の障害かもという気もします。
[自分の記憶をコントロールしたい]
この小説の面白いところはノートに書いたことが記憶のすべてとなるところです。忘れたいことは書かなければいいので自分の記憶をコントロールできるわけです。逆にこのノートに書かれていることがすべてになるということが問題となることもあります。他人が筆跡をまねてノートに書いたことはすべて自分の記憶となってしまいます。
他人が悪意を持っていなくてもノートを見られたりするリスクもあります。紛失したりするリスクもあります。だけどそういったリスクを考慮しても記憶をコントロールできるのは幸せな人生という気がします。僕もノートを使って記憶をコントロールする方法はないかと考えています。
楽しいことだけノートに書いて何度も読み直しそれ以外のことは思い出してはならないルールを己に課してみようと思います。まあそんなにうまく記憶をコントロール出来るなら苦労はないけど試してみようかと思います。
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[まとめ]
一定期間で記憶をなくすという主人公は小説やアニメなどでたまに見ます。本当にそういう人がいるのかどうかわかりませんが物語としては緊張感があってなかなか面白いです。他の作品も読んでみようかと思います。記憶がなくなってしまうから物事を観察して論理的に考えなければなりません。
そういったことが主人公に魅力を与えています。記憶がなくなる主人公というのは今まで興味があまりなかったですがなかなか面白い設定だったようです。